日本とアメリカで二重課税になるのか?
カリフォルニアやハワイ、ニューヨークなど、アメリカに不動産を所有している日本在住のオーナーから、よくいただく質問があります。
「アメリカの不動産を売却すると、日本とアメリカの両方で税金を払うことになるのでしょうか?」
結論から言うと、
日本とアメリカの両方で課税対象になる可能性はあります。
ただし、通常は 外国税額控除 という制度があるため、
同じ利益に対して完全に二重課税になるわけではありません。
しかし実際の取引では
- 売却時に大きな源泉徴収(FIRPTA)が発生する
- 日本側で追加の税金が発生する
- 為替の影響で想定より税額が増える
といったケースもあります。
この記事では、日本在住者がアメリカ不動産を売却した場合の基本的な税務の仕組みを整理します。
※私は米国公認会計士として、主にアメリカ側の税務・不動産取引のサポートを行っています。日本側の申告については日本の税理士への確認が必要になりますが、日本在住オーナーが理解しておくべき基本的なポイントを解説します。
典型的なケース
例えば次のようなケースです。
- 1990年代にロサンゼルスで不動産を購入
- 購入価格:50万ドル
- 現在の売却価格:200万ドル
この場合、売却によって
150万ドルのキャピタルゲイン(売却益)
が発生します。
ここで多くの日本人オーナーが疑問に思うのが
「この利益に対して、日本とアメリカで両方税金がかかるのか?」
という点です。

アメリカではどのような税金がかかるのか
アメリカに所在する不動産を売却した場合、
アメリカ非居住者(例えば日本の居住者)でも アメリカで課税 されます。
主な税金は次の2つです。
① 連邦キャピタルゲイン税/Federal Capital Gain Tax
長期保有の場合
約15%〜23.8% (2026年現在)
② 州税/State Tax
州によって税率は大きく異なります。
2026年現在の最高税率の例は次の通りです。
- カリフォルニア州:最大 約13.3%
- ハワイ州:最大 約11%
- ニューヨーク州:最大 約10.9%
(※ニューヨーク市内居住者の場合はさらに市税が追加される可能性があります)
合計税率のイメージ
連邦税と州税を合わせると、
約20%〜37%程度
になるケースがあります。
FIRPTA(外国人売却時の源泉徴収)
外国人(アメリカ非居住者等)がアメリカ不動産を売却する場合、
FIRPTA(Foreign Investment in Real Property Tax Act)
という制度により、売却時に源泉徴収が行われます。
通常は
売却価格の15%
が源泉徴収されます。(2026年現在)
例えば
売却価格:200万ドルの場合
30万ドル
が源泉徴収される可能性があります。
ただし重要なのは、
FIRPTAは「税金」ではなく「前払い」
という点です。
実際の税額より多く源泉徴収された場合は、
税務申告によって還付を受けることができます。
(アメリカで適切な税務申告を行うことが重要です。)
日本では課税されるのか
日本に居住している場合、原則として
全世界所得課税
となります。
つまり、海外(日本国外)不動産の売却益も
日本の課税対象になる可能性があります。
海外(日本国外)不動産売却の利益は通常
譲渡所得
として課税されます。
税率は状況によって異なりますが、
一般的には
約20%前後
になるケースが多いようです。

二重課税は起きるのか
ここが一番重要なポイントです。
アメリカと日本の両方で課税対象になる可能性はありますが、
通常は
外国税額控除
という制度があります。
これは、
アメリカで支払った税金を日本の税額から控除できる制度
です。
イメージとしては
日本で計算した税額
−
アメリカで支払った税金
=
日本で追加で支払う税金
という形になります。
そのため多くの場合、
同じ利益に対して完全な二重課税になるわけではありません。
実務でよく起きる問題
実際の売却では、次のような問題がよく発生します。
FIRPTA withholding(源泉徴収)が多すぎる
売却価格の15%が源泉されるため、
実際の税額より大幅に多くなるケースがあります。
日本側の申告を忘れる
海外(日本国外)不動産売却は、日本でも申告が必要になる可能性があります。
為替の影響
日本では
円換算
で税額計算されるため、
為替レートの影響が大きくなります。
売却前に確認しておくべきチェックリスト
日本在住オーナーの場合、売却前に次の点を確認することが重要です。
- FIRPTA withholding(源泉徴収)
- アメリカでのキャピタルゲイン税
- 州税(州ごとに異なる)
- 日本での譲渡所得課税
- 外国税額控除
- 為替レートの影響
これらを事前に整理しておくことで、売却後の税務トラブルを避けることができます。
まとめ
日本在住者がアメリカ不動産を売却した場合
- アメリカで課税
- 日本でも課税対象になる可能性
があります。
しかし通常は
外国税額控除
により、同じ所得に対して完全な二重課税になるわけではありません。
ただし実際の税額は
- 保有期間
- 売却価格
- 州税
- 為替
などによって大きく変わります。
日本在住オーナーの方へ
カリフォルニア、ハワイ、ニューヨークなどアメリカの不動産を売却する場合、
- FIRPTA
- アメリカ税務申告
- 日本税務との関係
など、事前に整理しておくべきポイントが多くあります。
111 Capital Group では、米国公認会計士として
アメリカ側の税務・不動産取引の観点からのアドバイスを提供しています。
もし
- アメリカ不動産の売却を検討している
- 売却時の税金の概算を知りたい
という場合は、お気軽にご相談ください。



