アメリカ不動産の売却を検討されている日本人オーナーの方から、最も多くいただくご質問があります。
「結局、私の手元にはいくら残るのでしょうか?」
実は、多くの方が税率ばかりを気にされます。
しかし、本当に重要なのは、
「税金をすべて支払った後に、銀行口座へいくら入るのか」
です。
例えば、
- 「1,500,000ドルで売れそうです。」
- 「700,000ドル儲かったので安心です。」
と思っていても、
実際には、
- 仲介手数料
- Escrow費用
- Title費用
- ローン返済
- Capital Gain Tax
- Depreciation Recapture
- 州所得税
- FIRPTA
- HARPTA(ハワイの場合)
- 日本側の税金
などを考慮すると、最終的な手取り額は大きく変わることがあります。
本記事では、
売却価格ではなく、「税引後キャッシュ(After-Tax Cash)」
という視点から、実際にどれくらい手元へ残るのかをシミュレーションしながら解説します。
■ 売却価格=手元に残るお金ではない
例えば、
売却価格:$1,500,000
と聞くと、
「150万ドル受け取れる」
と思われる方もいらっしゃいます。
しかし実際には、売却価格から様々なお金が差し引かれます。
例えば、
- Realtor Commission
- Escrow Fee
- Title Insurance
- Recording Fee
- HOA精算
- Property Tax精算
- ローン残高
- FIRPTA
- HARPTA(ハワイ)
- Capital Gain Tax
- Depreciation Recapture
- 州所得税
などです。
つまり、
売却価格と手元資金は全く別物
なのです。

■ ケース① ロサンゼルスのアパートを売却した場合
仮に次のようなケースを考えてみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | $1,500,000 |
| 購入価格 | $700,000 |
| Capital Improvement | $200,000 |
| ローン残高 | $500,000 |
| 売却費用 | 約$90,000 |
このケースでは、
まず、
売却価格
$1,500,000
から
- 仲介手数料
- Escrow
- Title
- ローン返済
などが差し引かれます。
その後、
利益に対して
- Capital Gain Tax
- Depreciation Recapture
- California State Tax
などが発生する可能性があります。
さらに、日本居住者であれば、
日本側の確定申告も検討する必要があります。
その結果、
「150万ドルで売れたから150万ドル受け取れる」
ということにはなりません。
■ ケース② ハワイのコンドミニアムを売却した場合
ハワイでは、
さらに
HARPTA
が関係してきます。
例えば、
売却価格
$1,000,000
の場合、
HARPTAでは、
一般的にAmount Realizedの7.25%が源泉徴収されます。
つまり、
約
$72,500
がクロージング時に拘束される可能性があります。
さらに、
外国人売主であれば、
FIRPTA
も適用される場合があります。
つまり、
手元資金はさらに少なくなります。
もっとも、
HARPTAもFIRPTAも
最終税額ではありません。
一定条件を満たせば、
還付を受けられる可能性があります。
詳しくは、
の記事をご覧ください。
■ ケース③ 日本へ帰国している場合
日本へ帰国した後に売却すると、
今度は、
日本側の税務も考慮する必要があります。
例えば、
- 外国税額控除
- 為替レート
- 日本側譲渡所得
- 確定申告
などです。
「アメリカで税金を払ったから、日本では何もしなくていい」
というわけではありません。
■ 売却価格から実際に差し引かれるもの
売却時には、一般的に次のような項目が差し引かれます。
① 仲介手数料
通常は売却価格の数%。
② Escrow費用
エスクロー会社への支払いです。
③ Title費用
タイトル保険費用など。
④ Property Tax精算
固定資産税の日割り精算。
⑤ HOA精算
コンドミニアム等の物件の場合。
⑥ ローン返済
未返済残高。
⑦ FIRPTA
外国人売主の場合。
⑧ HARPTA
ハワイ州。
⑨ Capital Gain Tax
譲渡益課税。
⑩ Depreciation Recapture
減価償却戻し税。
⑪ 州所得税
California
New York
など。
⑫ 日本側課税
帰国済みの場合など。
■ 「利益」と「キャッシュ」は違う
ここが非常に重要です。
例えば、
税務上は
利益
$500,000
だったとしても、
実際のキャッシュは、
ローン返済などによって、
$250,000しか残らない
ということも珍しくありません。
逆に、
利益が大きくても、
リファイナンスで既に多額の現金を引き出しているケースでは、
売却後の手残りが想像以上に少ないこともあります。
つまり、
税務上の利益と、
銀行口座に残る現金は一致しません。
■ 売却前にシミュレーションすべき理由
実際には、
売却前に
- Capital Gain Tax
- Depreciation Recapture
- 州税
- FIRPTA
- HARPTA
- 日本側税金
まで試算すると、
「今は売らない方がいい」
という結論になるケースもあります。
例えば、
あと1年保有することで、
- 家賃収入
- 資産価値
- 税務上のメリット
が改善する場合もあります。
反対に、
今売却した方が、
税引後キャッシュが最大になるケースもあります。
つまり、
売却するかどうかは、「価格」だけでは判断できないのです。

■ よくある誤解
「高く売れれば成功」
実際には、
手残りが少なければ成功とは言えません。
「FIRPTAで15%取られた」
FIRPTAは源泉徴収制度です。
最終税額ではありません。
「HARPTAで7.25%払った」
こちらも源泉徴収です。
還付を受けられる場合があります。
「税金だけ見ればいい」
実際には、
ローン返済額の方が、
税金より大きな影響を与えることもあります。
■ 売却前チェックリスト
売却前には、
以下を確認しておきましょう。
□ ローン残高
□ 売却費用
□ Capital Improvement
□ Depreciation Schedule
□ FIRPTA対象か
□ HARPTA対象か
□ 州税
□ 日本側課税
□ 外国税額控除
□ 売却後に残るキャッシュ
■ 「売る」「保有する」「借り換える」を比較する
実は、
最も重要なのは、
「売却すること」ではありません。
比較すべきなのは、
- 売却
- 長期保有
- Cash-out Refinance
- 1031 Exchange
です。
税引後キャッシュを比較すると、
売却しない方が有利なケースもあります。
■ まとめ
アメリカ不動産を売却するときに、本当に重要なのは、
「いくらで売れるか」ではなく、「最終的にいくら手元へ残るか」です。
そのためには、
- 仲介手数料
- ローン返済
- Capital Gain Tax
- Depreciation Recapture
- 州所得税
- FIRPTA
- HARPTA
- 日本側課税
- 外国税額控除
まで含めた総合的なシミュレーションが欠かせません。
売却価格だけを見て判断すると、思っていたより手残りが少なくなるケースもあります。
一方で、売却・保有・借り換え・1031 Exchangeを比較した結果、より有利な選択肢が見つかることも少なくありません。
■ ご相談について
111 Capital Groupでは、日本人のアメリカ不動産オーナー向けに、
- 売却後の手残り(After-Tax Cash)のシミュレーション
- FIRPTA・HARPTAの影響分析
- Capital Gain Tax・Depreciation Recaptureの試算
- 日本側課税・外国税額控除の論点整理
- 売却・保有・Cash-out Refinance・1031 Exchangeの比較検討
などをサポートしています。
「売却すると最終的にいくら手元へ残るのか知りたい」
「売却するべきか、それとも保有や借り換えを選ぶべきか迷っている」
という方は、お気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、税務・法務・投資に関する個別のアドバイスではありません。実際の税額や手取り額は、物件の所在地、保有期間、減価償却、所有形態、ローン残高、居住国などにより異なります。具体的な判断については、米国CPA、税理士、弁護士などの専門家へご相談ください。



